200816
於:京都大学総合博物館
前畑 典子

「ゾム・ジオメトリー」の著者であるジョージ・ハート先生が日本学術振興会の招きで来日され、京都大学の立木秀樹先生とご一緒にご指導くださり、午前中と午後の2回に分けて多面体を作るワークショップが行われた。午前中はゾムツールを使って、午後はCDを材料としてのワークショップが行われ、大変楽しいワークショップが行われた。中・高校生や一般の参加者が、各回とも約50名数名で力を合わせて多面体モデルを製作し、多面体・多胞体の理解に努めるという、大変有意義な時を過ごすことができた。その模様をご報告したい。



京都大学総合博物館は、260万点の学術標本資料を収蔵する本格的な博物館。平成9年に発足したまだ新しく立派な建物が東大路通りに面している。

6日は、朝十時から開かれるワークショップのために約50名の人が集まった。ジョージ・ハート先生と京都大学の立木先生を中心に、立木先生の学生さんたちがお手伝いくださり、早速ワークショップが始まった。



午前中の素材であるゾムツールは、使用したことのある参加者もいれば、初めての人もいる。ハート先生は、まず初めての人にも分かりやすく、ゾムに慣れるようにやさしく進めていく。ゾムツールを組み立てる上の注意事項も、その都度、ちょうど良いタイミングで話される。注意事項は、始めに箇条書きで伝えてから作業に入るのが一般によく見られるワークショップの進め方だと思うが、その点ハート先生は、参加者の関心をしっかりと掴んだ指導をされると感じた。また、作っているユニットの説明と、全体のプランは分けて話され、作業に専念しやすい。

参加者は、自然に発生したグループに分かれて協力し合い、順調にユニットを作成した。

左は、ゾムツールでまず立方体を作る参加者。




出来上がってくるユニットを、整理整頓するジャパン・ゾム・クラブの永井事務局長さん。ワークショップの手順に関しては、詳しい説明がジャパン・ゾム・クラブのページ上のコラムで報告されているので、そちらをご覧いただきたい。http://www.zome.jp/



皆で組み立てたユニットを、立体の下から構築していく。

始めは、中心からユニットを接合していこうとしたが、旧タイプのゾムツールの接合部分が短いため、しっかりとユニットを接合して支えることができず、しばし作業が中断した。この点は、ゾムツールの輸入元である私共も予測できなかった事態で、不勉強を反省することとなった。

アメリカのゾムツール社に問い合わせると、ストラットの先端の短いタイプは、2002年に改良されて、2002年以降は全て先端の長いタイプに変わっているとのこと。日本では、今回のような巨大モデルを製作することが今までなかったため、旧タイプのストラットでは重量を支えきれないことに思いいたらなかった。

ハート先生は、熟慮の結果、下部より立体を構築する方法に急遽切り替えられ、無事念願の巨大モデルを完成に導いてくださった。そういえば、バンフの会議で作った時は、特別タイトなノードを用意してあり、作るのに難儀したことがあった。巨大モデルには、かなりの負荷がかかるということが分かった。

モデルが大きくなるにつれて、「揺らさないで、触らないで」と、ハート先生も心配しながらの作業となった。




博物館内では、立木先生や学生さん達の力作モデルも展示されていた。午後の部で製作するCDを使った多面体の色分けを示すために、カラーノードで頂点を色分けしたモデルも作られていた。立木先生と学生の皆様のご準備は、さぞかし大変だっただろうと思う。しかしそのおかげで、参加者は大変満足なワークショップを体験することができた。
       




博物館内のミュージアムショップでは、ゾムツールなどの科学玩具や、パズルも販売されている。









東大路通りから見た、博物館内のゾム模型。
写真提供は、ジャパン・ゾム・クラブの永井賢次さん。







午後の部で製作した、CDを使ったサッカーボールの多面体。ワークショップの手順に関しては、ジャパン・ゾムクラブのホームページの、コラム欄に詳しく報告されているので、そちらをご覧いただきたい。また、ジョージ・ハート先生のホームページにも、写真が掲載されている。http://www.georgehart.com/Japan/index.html




今回、京都大学総合博物館のワークショップに参加させていただき、このような催しを定期的に行うことにより、科学的な催事に対しても、一般の人や子ども達の関心も高まり、参加者の層も広がるということが分かった。
参加者の中には、毎回参加して楽しみにしている中学生や一般の方も何人かいらした。また、ワークショップには魅力的で強力なリーダーが必要で、今回は本当に素晴らしい先生方のリードと、素晴らしい学生さんたちのフォローがあって、スムーズに進行したと感じた。
今後、日本でもこのような巨大モデルに挑戦するグループが増えてくるかもしれない。是非色々なところで今回のワークショップの成果を披露していただければと思う。私共もゾムツールの輸入元として、及ばずながら、ご協力させていただければと考えている。

京都大学総合博物館のホームページは、http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/
ワークショップの案内も掲載されている。開館時間は、9時半から4時半まで。最終入館時間は、4時。
詳しくは、ホームページをご覧いただきたい。